消音ピアノ(サイレント)の仕組みについて
後付けユニットはシャンクストッパーを取付け、鍵盤の下にセンサーを設置することはどのメーカーも大差ありません。
しかし、ピアノに後付けの消音ユニットを取付けることと、工場で最初から組み込む消音ピアノとの大きな違いは鍵盤のナラシや
アガキのコンディションがピアノ毎に個体差があることが後付けの難点と言えます。
鍵盤の下にセンサーを設置することの一番の難問題をご存知でしょうか?
それはピアノには白鍵と黒鍵があると言う事です。
鍵盤センサーとはいわゆる某かのスイッチが鍵盤の数だけ並んでいるものです。
もしピアノが白鍵だけでしたら、別段悩むような大問題ではなかったのです。
ピアノは打鍵の強弱により音の強弱を表現できる。
今さら当たり前のことですが、この当たり前の強弱をいかに鍵盤センサーに感知させるかが、消音ユニットセンサーの生命線
であり、設計上一番むずかしいところです。
白鍵と黒鍵とは?
鍵盤のキャプスタンよりアクションへタッチが伝えられますが、当然キャプスタンはと白鍵と黒鍵の区別なく同じ運動量で
上下しますね。しかしバランスピンは前後に位置が違いますし、バランスホールよりの鍵盤の長さも白鍵と黒鍵では違います。
と言う事は同じ10mmのアガキに対して別々な運動をしていることになります。
打鍵時の白鍵と黒鍵の下面差
があることなんかは後付け消音ユニットが開発されるまで、気にも止めなかった問題でした。
ヤマハの場合、概ね1mm程度黒鍵の方が深く下がることをご存知でしたか?
そして打鍵時の白鍵の黒鍵の下面の深さがメーカー、機種、年代により一定しておりません。
バランスレールよりフロント側では別な動きをしている、2種類の鍵盤があると言う事になる訳です。
鍵盤センサー、アクチュエーターの作用点
個々のセンサーへのスイッチの役目をするパーツをアクチュエーターと言います。
アクチュエーターが動くことにより、センサーへ鍵盤情報を感知させるわけです。
鍵盤センサーは横一列に前後位置が同じ位置に配列されていますので、鍵盤下面と触れることになるアクチュエーターの作用点も、当然横一列に同列に並ぶことになります。
こような状況では、アクチュエーターに対して白鍵と黒鍵は別々の動きをすると言う事イコール、センサーに対しても違った
情報を送っていると言えます。
もし横一列のセンサーが同じ設定であれば、白鍵と黒鍵ではバランスの違ったデジタル音が出ることになることが、おわかりいただけたと思います。
白鍵と黒鍵のプログラムを変える
白鍵と黒鍵が同じ音量バランスで反応するようには、白鍵用と黒鍵用に別々のプログラムを設計します。
が、ここでまた問題が起きます。
後付け消音ユニットは概ねヤマハピアノに
取付けること前提に全体を設計します。理由は一番の販売台数があるメーカーに後付けされることを想定するためです。
前出の白鍵と黒鍵の打鍵時の下面の差などもヤマハの基本モデルの鍵盤の運動量を元に白鍵、黒鍵別のプログラムをメーカーで
設定します。
では、ヤマハの運動量より数値の違うメーカーのピアノに、このプログラムのセンサーを付けるとどうなるでしょうか?
結論は消音時の白鍵と黒鍵のデジタル音のバランスが崩れてしまいます。
例え、ヤマハピアノに取付けるとしましても、お客様宅にて長期間使われていたピアノはメーカーが望む白鍵と黒鍵のナラシ、
アガキの関係がずれていることが考えられます。
ずれていた場合はメーカーが望む、ナラシ、アガキに時間をかけて再度整調をする必要がありますね。
打鍵時に白鍵下面と黒鍵下面が同位置
にあるピアノなどに取付場合はどうなるでしょうか?そのままでは黒鍵が反応しづらくなります。
アコースティック状態を壊すわけにもいきませんから、黒鍵のアガキを11mmにはできません。
黒鍵の下面、アクチュエーターに当たる箇所に1mm厚のものを貼付けますか??
マジックスターでは日本製のみならずヨーロッパのピアノ
の多種多様なピアノの鍵盤差に対応するために、メーカーで固定のプログラムをキーセンサーへメモリーしないことにしました。
取付けた後に、そのピアノの全鍵盤の個々のナラシ、アガキを読み込ませるプログラムを採用しています。
この作業を初期設定(イニシャライズ)と呼んでいますが、作業時間は1分程度で済みます。
引越などでピアノのバランスが変化した場合でも、現地で再度初期設定すれば正常な状態に戻ります。
そして、個々の鍵盤の初期設定バランスのずれが気になる場合は鍵盤毎の感度調整も可能です。
以上のような理由でマジックスターは取付後に初期設定をしていただくシステムになりました。
マジックスターの鍵盤センサー初期設定機能について説明します。